香港文化・ビジネス

香港の冠婚葬祭(1)

本日は香港の冠婚葬祭(特に葬祭面)で注意すべき点についてシェアいたします。

香港では死亡届けと故人のIDカードを持って役所に行き、死亡確認証をもらって初めて葬儀の手配をすることができます。日本のように亡くなった日や翌日葬儀が行われることはなく、葬儀場の順番待ちになるため、場合によっては一か月ほど待つこともあります。その間ご遺体は葬儀が決まった葬儀場の霊安室にて保管されることになります。

葬儀場は宗派ごとに分かれていないため、仏教のとなりでキリスト教が、その隣では道教での葬儀が行われています。葬儀場は街の中心地にいくつもあり、大きさもまちまちです。私の観察では、最も大きな部屋はグランドフロア(日本でいうところの一階)となり、階が上になればなるほど葬儀が行われる部屋は小さくなっています。

火葬が一般的ですが、土葬もあります。特に政府の高官や殉職した警察官、名士や大きな会社の社長などは土葬されているようです。但し料金を比べると1対100ほどの開きがあるとも言われています。土地が少ないここ香港で土葬の為の場所を確保することは至難の業と言えます。

では我々が香港の葬儀場に行くことになるのは、一体どんな時でしょうか。

先ず親しくしていた本人の葬儀、或いは親しい方のご両親や配偶者などの葬儀となります。これは日本と変わりません。

しかしながら、いくら親しくても近い将来(自身或いは家族などに)お祝い事がある場合は出席しません。その旨を説明し、誰かにお香典を頼んだり、お花を送ったりすることで弔意を表します。その逆で家族に不幸があった場合はお祝い事(披露宴など)への出席は辞退します。

では本当に葬儀場に足を運ぶことになった場合の注意としては、お香典は必ず1ドルをいれた金額にしなければなりません。例えば100ドルなら101ドルを、500ドルなら501ドルを渡します。香典袋は葬儀場に無料で置いてあるので、お金だけ持参しその場で袋にいれ、自分の名前を書いても問題ありません。黒ペンももれなく置いてあります。自宅から用意する場合は、真っ白な封筒に入れ、裏側に自分の名前を書けば大丈夫です。所属先がある場合は、会社名や大学名なども併せて書くようにした方が相手にとって分かり易いと思います。

それでは香典には具体的にいくらいれるのでしょうか。これは本当に相手との関係が深いかどうかによります。私の例ですが、先月10年来の友人のお父様が亡くなり葬儀場に伺った時は301ドルにしました。友人とは年に何回か会い食事をしたりする仲ですが、自宅に招かれたりお父様と直接話したりしたことは無かったため、この金額にしました。もし自宅を行き来するほど親しい場合は501 ドルにしたと思います。

4年前にうちの義母が亡くなった際、同僚からいただいたお香典は201ドルが多かったです。部下からは101ドルでした。これらはオフィスで直接手渡しでいただいただけでした。日本と違って特にお返しというものが無いので、いただいたらいただきっぱなしになります。ただ実際葬儀場に来てくださった方々には飴1個、ティッシュ一枚、1ドルが入った子袋をお香典と引き換えにいただきます。それらは自宅まで持ち帰ってはいけないと言われており、飴は直ぐに食べてしまい、1ドルは帰りつくまでに使ってしまうか葬儀場入り口の募金箱に寄付、ティッシュもすぐさま使って捨ててしまいます。

また服装については本当に適当です。先述の友人はハイキング仲間の一人なのでグループほぼ全員で葬儀場入り口に集合。全員ハイキングの恰好で葬儀場に行き挨拶してお香典を渡したらすぐにハイキングに向かいました。それこそ赤や黄色の服を着ていた人もたくさんいましたが、みな気にしていない感じでした。私自身は用事があってハイキングには行かなかったので、黒っぽい服装で行ったら逆にこのグループでは目立ってしまいました。

しかしながら、自分が葬儀を出す側になったら、宗教によって着用すべき服がありますので葬儀屋さんの指示に従います。義母の葬儀はキリスト教式で行われたので、家族は全員黒い服を着用と言われましたが、中にはグレーや紺色の人もいました。日本のように喪服は無いので、それぞれが有るもので代用という形になります。

今まで何度もこのような場に立ち会いましたが、弔電は見たことがありません。おそらくこのような文化がないのだと思われます。お花を届けたい時は事前注文できればその方がよいのでしょうが、うっかりしていても葬儀当日葬儀場の近くまで行けば「花を出さないか?」と声を掛けてくる花屋さんが沢山います。ただお花の質はあまり良くないように感じますし、使いまわしているというのを聞いたこともあります。それでも出したい場合は便利です。

ちなみに火葬の場合はご遺体を預けて焼いていただく形になり、数週間待ってようやくお骨が家族の元に届きます。よって日本のように焼いている間待ってお骨を拾うこともないため、なんともあっけなく葬儀は終了します。終了後は身内や参列者の有志と共に食事に行く習慣があります。一般の中華レストランには葬儀用メニューがあるので、事前にテーブルの数(12人で1テーブル)と時間を伝えておくだけで大丈夫です。料金は喪主側の支払いとなります。

またお骨を自宅に持ち帰る習慣はなく、お墓に入れるまではお金を払って預けておくのが一般的です。お墓も抽選ですし日本式のように家族が入る墓などは無く一般の人はロッカースタイルのところになりますが、夫婦で入れるスペースは確保できます。すなわち義母が入っているお墓には将来的に義父ももれなく入れることができるというわけです。うちの場合はラッキーで一回目の抽選で当たったため、待ち時間がほとんどなくお墓への納骨が可能でした。場合によっては一年以上待つ人もいると聞いたことがあります。

最後に喪中期間についてですが、昔は一年間ともそれ以上とも言われたそうですが、最近はその家族ごとに違うようです。うちの場合は1月上旬に義母が亡くなった為、旧正月前までに急いで葬儀を済ませました。さすがに旧正月は祝いませんでしたが、49日が終わったあたりからは通常になったと記憶しています。お祝い事への出席は丁重にお断りしましたが、会社のアニュアルディナー(年に一度の食事会)には出席しました。ただその年だけはお年玉は一袋も配りませんでした。しかしながら頂くのは問題ないとのことで、会社からのお年玉は有難くいただきました。

郷に入れば郷に従えとはよく言ったもので、文化慣習には少し違いがあります。もう10年ほど前になりますが、当時仕事で知り合いとても親しくしていた友人が癌になり治療の結果40歳で亡くなった時は本当に辛かったです。私たちは今でも年に一度、彼の墓参りのため離島に出向いています。離島ではロッカー式ではなく、日本に近い形でのお墓があります。但し30分ほど山を登らないとつかないので、年々墓参りの参加者が減ってしまうのもやむを得ないことだと感じています。友人の死をきっかけに、当時香港以外に散らばっていた仲間たちがここに戻り又集まることができた事に感謝し、又友人の事を想いながら登る山登りは私にとっては一年に一度の大切な時間です。大切な人を思う心は万国共通なのだと改めて感じるのです。