香港人材紹介

失業率と転職の関係

今年6月末の発表で香港の最新失業率は5.9%と15年以来の高い数字を記録しています。ご存知のとおりこれは新型コロナウイルスの影響が大きく、特に飲食業界・建築業界・メンテナンスを方々などは10%以上の失業率と言われています。これに伴い新卒や若年層(10代)の就職率も非常に下がっているのが顕著です。私も最近、以前インターンシップで手伝ってもらった学生から連絡をもらい、今年の就職戦線がいかに悲惨であるかを聞きました。今までもそうでしたが、香港の場合よい年と悪い年の給与格差が激しく、一年違いの入社で新卒の給与が数千ドル単位で違ってくることがあるため、例えば今年のような年に入社して二年目になると、その状況を知ったら馬鹿らしくなって辞めてしまうということが度々繰り返されてきました。一年遅れで入ってきた後輩が自分より給与が高いのに耐えられないというものです。もしかしたら来年も同じような状況が起こるかもしれません。

ESS「保就業」スキームは企業を、従業員を救えるか?

このような状況の今、現在仕事がある人はそのほとんどが転職市場には出てきていないように感じます。先ずは既存の会社に留まり、転職は先送りにしようと。経営者側と話しても、今年はスタッフが辞めないよなぁと苦笑している様子もよく拝見します。現在香港政庁が進めている給与の半額最大9000ドルの補助金が受けられるESS「保就業」スキームにより、これに申し込んだ企業はこの補助金を受けている期間中に従業員の人数が減ってはならないというルールがあります。もし依願退職者がでたとしても、即代わりを補充しなければなりません。この補助金スキームに申し込んだ企業の多くが第一回目のお金を受け取っていますので、そういう意味では経営側にも緊張感があるかもしれません。なぜならルールを破ると罰金を払わなければならないからです。

昨日の発表によるとかなり大手の企業もこのスキームを申請したとのこと。ちなみに申請企業のすべてのリストはこちらから見れます。このように一般に公開することにより従業員解雇を阻止しようとしているが見受けられます。先月ある転職希望者と話したときは「今の会社がこのスキームを申請するかしないかが一つのカギだと」と言っていました。どんなに業績が悪くても申請することを決めたなら解雇の可能性は一時的に回避されるだろうと思ったようです。少なくとも第一回目の補助金がでる三か月間は。そう言った彼女は結局このスキームの結果を待たずに依願退職しました。今年に入って社員がどんどん辞めているのに補充しない状況をイライラしながら見ていたようです。逆にこのスキームを申し込んだ企業側はさぞ驚いたことでしょう。罰金を支払わないようにするためには短期間で人材を補充しなければならないからです。

どんな時でもある求人とは?

では前出の彼女はどうやって仕事を見つけたのでしょう。このコロナ全盛期だった3月~5月の間に彼女は転職活動をしていたのですが、最終的にはリファーラル(知人の紹介)で決まったそうです。特に人材紹介会社やネット上での求人募集サイトにも登録はしていたそうですが、実際の求人としては数えるほど。しかも条件を著しく下げてまでの転職はどうしたものかと思っていたところ、偶然ご紹介で仕事が決まるというラッキーな展開になりました。

コロナで大打撃を受けた飲食業界ですが、知り合いのレストランはその間に3名の増員を行っています。これがチャンスとばかりに五つ星のレストランで働いた経験があるスタッフを手ごろな給与で引き抜くことに成功したそうです。このレストランもコロナの影響を大いに受けておられたと思いますが、「アフターコロナに賭けたんだよ」とは社長さんのお話し。実際コロナが収束しつつある昨今では大いに消費が戻ってきていますので、この社長さんはこの賭けに勝ったと言えるでしょう。

「転職はタイミングとご縁できまる」とはよく言ったもの。前出の女性は今年が転職のタイミングだったのでしょう。「仕事は決まると思いますよ、もしその時がくれば」と私は転職希望者に言い続けています。それはもしかしたら私を介してやってくるかもしれません。常にアンテナを張っておくことも良い転職への第一歩です。

これから香港の失業率はしばらくは悪いと思いますが、その先には新しい未来が待っていると信じたいです。サーズやリーマンショックなどを経験した香港は強い、香港人は強い。そんな香港人の肩を借りながら、希望の転職ができることを願っています。